第6話:実稼働30%の真実ー若き工場長が見た「偽りの喧騒」

5000万の赤字だった町の塗装工場を黒字化させた7つの方法ー6

第5話:消えた改善効果と隠された20トンの闇

歩留まりを二〇ポイント改善しても、利益が出ない。 「不良さえ減らせば赤字は消える」という全従業員の共通認識が、根本から間違っているのではないか。私は、現場に漂う奇妙な「違和感」の正体を探り始めていた。

現場を眺めれば、誰もが額に汗して一生懸命に働いているように見える。だが、熟練の技術屋としての「勘」が、その光景にノーを突きつけていた。私は真実を確かめるため、埃を被ったまま誰も見向きもしなかった「作業日報」を全数集計し始めた。

一日三百枚。膨大な手書きの記録。 そこには、従業員一人ひとりが「どの工程に、何分かけたか」が記されていた。数日がかりで集計し、導き出された平均値を見た瞬間、私は自分の目を疑った。

一人あたりの勤務時間八時間に対し、実稼働時間はわずか「二.五時間」。

驚くべきことに、生産活動に従事している時間は、全勤務時間の三〇%にも満たなかったのだ。あとの五.五時間は、段取り替え、材料待ち、あるいは「動いているフリ」に消えていた。これでは、いくら塗装条件の改善を重ね工数を削減したり、歩留まりを向上させたところで、経営に響くはずがない。

工場の病巣は「技術」ではなく、「管理」という名の構造欠陥にあったのだ。

そんな矢先、運命が加速する。 失踪した前任者に代わって現場を支えていた副工場長が、急逝したのである。前夜まで酒を酌み交わしていたが、次の日の早朝に従業員のひとりからの早朝の訃報に、私は言葉を失った。

葬儀を終え、数日が経った頃。私の携帯に見知らぬ番号から着信があった。 「……次の工場長は、君がやってくれ」 声の主は、本社の社長だった。

歴代の工場長は部長クラスの重職が務めるのが慣例。当時三十五歳、課長代理に過ぎなかった私への指名は、組織としては異例中の異例だ。だが、私は迷わなかった。 「——承知いたしました。お引き受けします」

脳内にはすでに、この死に体の工場を蘇らせるための「反撃のシナリオ」が完成していたからだ。 だが、工場長という全権を手にした私が、その扉の向こう側で見つけることになる「真の闇」については、この時の私はまだ知る由もなかった。

第7話:消えた一億円の行方、経理部長が仕掛けた「売価設定」という罠

Note:https://note.com/haletosu/n/na75f26fc3e37

 

 

小島 淳