5000万の赤字だった町の塗装工場を黒字化させた7つの方法ー4
成形工程の火の粉をなんとか振り払ったものの、工場の傷跡はまだ深く、血は止まっていなかった。
「残りも、見てくれないか」 当初は断り続けていた残りの四十近い製品群。だが、運命は私を逃がさなかった。中国から帰国して以来、この工場の「消火活動」に忙殺されていた私は、幸か不幸か他の新規案件を抱えていなかった。それが、私をこの泥沼に完全に引きずり込む口実となってしまった。
本格的な改善活動が始まろうとした矢先、組織に激震が走る。 もともとこの工場は、私が籍を置く商社の一事業所に過ぎなかった。それが、近隣にある製造子会社へと事業譲渡されることが決まったのだ。
実は、この組織変更には私の進言があった。 当時の工場の実態は、子会社で採用された従業員が親会社の工場で働くという、法的に極めて危うい状態——ある種の「偽装請負」に近い構造だった。技術屋として現場を守るためには、このコンプライアンス上の「爆弾」を放置するわけにはいかない。 「子会社化し、雇用と実態を一致させるべきだ」 組織を健全化するために放ったその正論は、採用された。
だが、正しさは時として、自分自身の首を絞める。
組織変更に伴い、新たな人事案が発表された。失踪した工場長に代わり、マネジメントを引き継いでいた副工場長が新工場長に昇格。そして——。 「君も、子会社へ出向だ」
その辞令は、私に「伊豆の現場から離れるな」と宣告するに等しかった。 現場を救うために打った一手が、私を東京の事務所から遠ざけ、この赤字工場という戦場に永住させる鎖となったのである。
逃げ場はなくなった。 私は覚悟を決め、改めてこの「病める工場」の深部へとメスを入れることにした。そこには、成形トラブルなど序の口に思えるほどの、さらなる腐敗が待ち受けていた。
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