第12話: 三人の仕事を一人でこなす —— 「スピードアップ」を捨て、「隙間」を殺した逆転の改善術
←第11話: 2倍の割増料金を叩き斬る —— 派遣契約の適正化と、戦力を選別する「3分間」の秘密
「なぜ、生産管理を徹底するだけで人件費が激減するのか?」
そう不思議に思う人も多いだろう。答えは極めてシンプルだ。私は、かつて三〇%だった現場の「仕事率」を、最終的に八五%まで引き上げることに成功したからである。
単純計算で、これまで三人がかりで行っていた作業を、たった一人で完結させる——。そんな劇的な変化が、私の工場で起きていた。
一般的な改善では、個々の作業スピードを上げようと躍起になることが多い。だが、私が注力したのはそこではない。私が徹底的に排除したのは、工程と工程の間に潜む「隙間時間」、すなわち「手待ち時間」の抹殺だった。
材料が届くのを待つ時間、次の指示を仰ぐ時間。そんな無駄を一切排除するため、生産管理がタクトを完璧にコントロールする。現場は素材が届いた瞬間に作業を開始し、完了と同時に次の工程へバトンを渡す。これだけのことだが、その効果は凄まじかった。
だが、ここで新たな課題が生まれる。
工程の効率を上げ、余計な仕事をさせないようにすると、ある部署では「一日の持ち時間のうち一時間しか仕事がない」という事態が発生する。これを放置すれば、現場はまた「動いているフリ」を始めてしまう。
そこで投入したのが「多能工化」という武器だ。
自分の部署や工程に固執するのをやめ、仕事が空いたら積極的に他の工程へ応援に入る。個人の持ち時間を、工場全体のボトルネックを解消するために有効活用させるのだ。
一分一秒の作業時間を削る「点」の改善よりも、工程間の隙間を埋める「線」の改善。
この視点の転換が、従来の改善手法を遥かに凌駕する数倍の成果を叩き出し、赤字の泥沼から工場を力強く押し上げていった。
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