案内された指先を見上げ、私は息を呑んだ。
そこにあったのは、パレットに載せられ、天井に届かんばかりに積み上げられた在庫の山だ。薄暗い倉庫の明かりに照らされたその物量は、一目見ただけでは到底判別がつかない。
1時間前まで、こんな場所に来る予定などなかった。
工場に赴任して三ヶ月。私は当時の工場長の要望で現場改善の合間を縫って経費の精査を行っていた。その中で、一枚の不審な請求書を見つけたのが事の発端だ。
金額は、約十万円。
振込先は、聞いたこともない物流会社。最初はただのチャーター便の費用かと思ったが、事務担当に問うと、彼は涼しい顔でこう言った。
「倉庫の賃借料ですよ」
私の脳内に、鋭い違和感が走る。
今いる工場には十分な空きスペースがある。何より、手元の在庫リストには外部倉庫の記述など一文字も存在しない。
「……見に行くか」
背後から声をかけてきた工場長に連れられ、今、私はその「隠し場所」に立っている。
パレットに近づき、ラベルを確認する。未開封の材料。
だが、それは後に調べて判明することだが、すでに量産が終了し、二度と使われることのない材料の残骸——二十トンに及ぶデッドストックだった。
帳簿にものっていなかったその材料の資産価値は約三百万。だが実態は、処分費用さえかかるただのゴミだ。
そのゴミを、わざわざ金を払って外部に隠し続けている。
「何なんだ、これは……」
あきれ果てて、怒りすら湧かなかった。
技術で赤字を立て直そうと日々泥にまみれていた私の足元には、想像を絶する深さの落とし穴が掘られていたのだ。
私は、やれやれと首を振り、この工場の「本当の始まり」に思いを馳せた。
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