たまたまかも知れませんが、昨今工場火災のニュースを多く見る機会が増加しています。実際自分が運営していた工場もぼやレベルですが、火事を発生してしまいました。そのため、公開は工場の火事について調査してみました。
工場の火災について
工場の火災について調べていた処、消防白書の「建物火災の火元建物用途別の損害状況(2021 年白書の場合資料 1-1-40)」にて工場火災の調査まとめを行っていたため、こちらの資料を参照してまとめてみました。
実は工場の火災は2000年から2020年にかけて、30%発生件数については減少傾向ではあるが、2015-2019年は逆に増加傾向でありました。
工場の火事が減った3つの理由
監視カメラが増えた
工場の監視カメラが増えた事で、放火等の事件が発生が抑えられた
喫煙者が減った
喫煙者が減った事により、タバコが原因の出火が減少、またライター、マッチといった火事の原因となるものを持ち歩かなくなった事も原因のひとつと考えられます
出火防止技術向上
燃焼器具、電気器具の出火防止技術が向上
工場の出火率
工場の出火率は、2021年に32.9件/10000件あたり 緩くはあるが2000年から20年間で比較すると25%と減少傾向となっているが、2015~2019年は増加傾向がある。
石油コンビナートの火災が増大
石油コンビナートの火災が、1993年が底で現在右肩上がりで増加している傾向があります。
実際火災が増大している理由が不明な事はありますが、ちょうどバブル崩壊の1年後から増加傾向で、原因として考えられるものとしてバブル崩壊で大幅なリストラが行われた事が大きく影響していると言われています。
もともと、優秀な従業員がTQC運動などによって、日々の改善活動が行われていたが、大規模なリストラが行われた事で、優秀な社員がいなくなり改善されてきた細かな暗黙知やノウハウが損なわれてしまった。これは一般的な科学的な事故防止対策であるリスクマネージメントよりもはるかに優秀に機能していたのが原因のひとつと言われています。
人の能力に頼った管理が行われていたのに、正社員のかわりに非正規雇用や下請に仕事を出すようになった事で、必要なノウハウが継承されず、帰属意識の低い作業者が最低限のルールのもとでしか作業が行われなくなった。それによってきめ細やかな管理が出来なくなったこれが火災事故に繋がる原因と現在考えられています。
工場の出火場所と出火原因
工場で火事が発生した場合80%以上が作業場所が圧倒的に多いとされています。の
発火源別出火件数(2017-2019)によると2751件の出火原因の中で、一番多かったのが
熱せられた金属等 | 344件 |
切削・衝撃等の火花 | 273件 |
配線・配線器具類 | 271件 |
電気機器 | 244件 |
溶接器・溶断機 | 179件 |
熱せられた金属等344件と全体の約12%となっています。そして上位5原因で全体の出火原因の約半分にあたります。
やはり共通しているのが、熱源や火花の出る作業が原因なのが多いのは納得出来るのですが、その次に配線や電気製品からの出火が非常に多い事が判ります。火を使う工場は少ないですが、配線はどの工場にもあるものですので、他人事にしてはいけないものです。
工場の建築に対する法律
工場の建設については、耐火建築物にする必要が無いため、準耐火非木造の工場が多いのが現状です。しかし準耐火非木造の工場の出火件数は1725件と多くその多くが1500m2以上となっており、10000m2以上も3件発生しています。一方で耐火建築物で被害にあった工場は363件と少ないのもありますが、焼損床面積が1500m2以上が22件と10000m2以上の工場は1件もありません。(2017-1029 構造別工場等火災の焼損床面積を参照 )
法 27 条 | (準)耐火建築物にする義務がない。 |
令 112 条 | 自主的に(準)耐火建築物にした場合, 原則として 1500 m2 以内ごとに防火区画 が必要だが,不要とされる場合も多い。 |
法 26 条 | (準)耐火建築物以外のものは, 原則とし て 1000 m2 以内ごとに耐火構造の防火壁 で区画する必要があるが,条件を満たせ ば不要とすることができる。 |
法;建築基準法,令;同法施行令
まとめ
工場は建築基準法令上,規制は全体的に緩い傾向がありますが、問題が発生した場合、被害が大きくなる事が予想されています。
そのため構造については防火対策をすべきかと思います。また同様に工場は消防法令上スプリンクラーの設置基準が無いため、初期消火のためにも設置を薦めたいと思います。ただ国内では設置例が少ないと言われています。ただ米国では、火災保険の保険料の関係で、スプリンクラーの設置は行っているようです。