工場にとって材料費(仕入れ)は大きな経費のひとつです。材料比率としては、一般的に3割程度と売上げに対して大きな比率となっています。そんな材料費を下げるためのテクニックを書きます。
それは、消費をするもののみ購入する事です。
「そんなの当たり前じゃないか」
そう当たり前と思われるかもしれないですが、実は、出来ていない工場が結構あるのです。
それはどんな所で判るかと言うと
量産が終了した時に、材料が余ったりしていませんか?
特に、未開封の材料が余ってませんか。これは購入する必要がなかった材料を購入してしまった事を表します。
ようするに購入量をコントロールする事が材料費を最小化するためには重要なんです。
これは、ごく当たり前の事ですが、材料を購入する時に購入する単位が存在します。
それは樹脂材料であれば、25kg単位、塗料であれば、1斗缶単位(主剤であれば20kg、シンナーであれば20L)でしか購入する事が出来ません。余りが発生した場合それは、ロスです。余ってしまったそれが、利益を圧迫してしまいます。
こんな時に顧客に見積もり等を提出する時に、このロス分をしっかりとコスト計算にいれておく必要があります。
実はこれって当たり前にやる必要があるのですが、やられていない会社なんかもあります。
毎月定期的に購入している材料をまとめ購入する事はとても問題があります。
例えば、@650/kg PC(ポリカーボネイト)を毎月購入している場合、材料メーカーからのオファーで、1トン単位で購入してもらえれば、1割引きで提供すると言われたらあなたはどうしますか?
毎月100kg購入
@650/kg × 100kg ⇒ 65,000円・・・・①
1tまとめて購入
@650/kg× 1,000kg ⇒ 650,000円-1割引き(65,000円) ⇒ 585,000万円・・・②
①×10ヶ月 - ② ⇒ 65,000円(値引き額)・・・③
ここで問題となるのが、別途保管費用発生する事です。
通常毎月購入であれば、材料を消費する量のみ購入する事で、保管費用は発生しません、一方で10ヶ月単位で購入した場合は在庫費用が発生します。社内で保管するんだから費用を発生しないと言われる事もありますが、材料をまとめ手配をするという事は、社内であってもスペースを使用することで、保管費用が発生すると考える事が妥当と考えます。それは場合によって社内の倉庫が満杯となり外部倉庫を利用する可能性が出てくるからでもあります。
外部倉庫を借りる前提ですと、相場から考えると1パレットあたり@5,000円/月程度の費用が発生します。
1トンの材料は、1パレットにちょうど乗るサイズです。また10ヶ月分保管となるため
@5000円/月 × 10ヶ月 ⇒ 50,000円(保管費用)・・・④
値引き額③から保管費用④を引くと実質の値引き額になる
65,000円 - 50,000円 ⇒ 15,000円・・・⑤(実質の特になった金額)
さらに別方面で、在庫を抱えるという事は、キャッシュフローに影響が発生します。
それまで、当月購入、当月消費、当月販売にて資金を動かしていた所に、在庫を10ヶ月間かかえるという判断をした場合、顧客からの入金が10ヶ月間経たないと満額入金されてこないと考えます。
その場合、10ヶ月分先に期限のある手形として考えます。手形には金利が発生しています。通常短期プライムレートに左右しますが、現在の金利から、ちょっと高いですが、10ヶ月間で1%と考えます。
そうすると、10ヶ月間の金利は、
650,000円(支払) × 1%(金利) ⇒ 6,500円(金利)・・・⑥
実質の特と思われる金額⑤から金利⑥が引かれます。
15,000円 - 6,500円 ⇒ 8,500 実質の値引き額・・・⑦
8,500円が、実質 650,000円分まとめ購入をした時の、お得になった金額になります。
8.500円 / 650,000円 ⇒ 約1.3%の値引き額相当となります。・・・⑧
これって 本当にお得だったのでしょうか?
実は、在庫を持つという事は、もうひとつのリスクが発生します。
それは、本当に消費が出来るのかという事です。
材料のまとめ購入は、量産なり、その材料を使用した生産が継続する事を前提で購入するかと思います。
例えば車関係の仕事では、3発と呼ばれる生産予定が、3ヶ月前になると提示されます。それに相当する事で、材料の購入保証が締結されますが、それは最大3ヶ月までです。
車関係の生産予定は車種毎に異なりますが一般的に、一般車であれば2年、トラック関係であれば5年のライフサイクルがあると言われてきました。これは、マイナーチェンジ単位で部品が変更となる事で、生産ライフがこれに影響するからです。
ただ、安定してると言われてきた車部品であっても、現在は人気が無くなると、途中で生産計画が止まる事もあるため、確実なのは三発だけです。
そのため、10ヶ月間の在庫は大きなリスクでもあります。材料在庫の消費が出来ない可能性が出てくるからです。
また、材料在庫が生産が終わりもう使用する事も無いとなると、捨てるしかありません。
廃棄費用は産廃会社との協議となりますが、これも産廃会社によってまちまちですが、過去プラスチック材料の廃棄にかかった費用が1kgあたり100円程度の産廃費用でした。
そのため、半分の5ヶ月間の材料が無駄になったと仮定すると
500kg(購入量の半分)×100円/kg(処分費用) ⇒ 50,000円(処分費用)・・・⑨
材料費の購入費用と、処分費用を同時に考える人は少ないと思いますが、もし使用しなくなった時には産廃費用が発生するという大きなリスクが発生します。
実質のお得分が⑧8,500円に対してもしかして発生する在庫処分費用リスクである⑨50,000円を考慮した時に、はたしてまとめ購入がお得になるのでしょうか?
私の考えでは、時代の変化が激しい昨今では、1割程度の値引き程度でのまとめ購入ではリスクが増大するだけでメリットはひとつも無いと考えます。在庫を持つと言う事は、見えない費用が多く発生する事に繋がります。
もちろん、まとめ購入をした時に値引き額が50%OFF等大幅な値引きが期待できれば、また考えも違ってくるでしょうが。
材料費を抑えるためには、余らせない使わない材料を作らない事が絶対条件です。
そのためには、使用量を正確に把握する事が必須です。
最初は、見積もりなどの想定使用量などで、材料の調達量を計算しますが、
通常使用量は
段取り+実質使用量(1個あたり)×生産数量となります。
そのため、重要となって来るのが、実際生産をした後の使用量になります。
使用量は、現場で記録され、日報という形で、通常保管されるかと思いますが、これは現場だけでは無く、調達をする管理部門にもその情報が共有化されなければにりません。
ここが出来ていないと、想定と実質に大きな開きが発生してしまいます。
そのため、使用記録のデーター化と共有化は重要な事項となっています。電子化、デジタル化またはDX化と呼ばれているものを対応する事で、情報の共有化がすすむ事でしょう。
それによって、正確な材料購入をする事が可能となります。
材料費は経費の中でも大きく、材料費の増減は利益に直接影響を及ぼします。
そのため、材料費を減らす事は、工場経営者としては、やるべき事のひとつですが、ただ、まとめ購入などは選択肢としては選んではいけないものです。
まずは正確な使用量の把握そして、その消費量に添った、材料調達が材料費の最小化をする事が出来る唯一の道であると思っていて下さい。