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[水質汚濁防止法]:工場排水管理の基礎知識とコンプライアンス遵守のための改善戦略[工場改善の専門家が徹底解説]

[水質汚濁防止法]:工場排水管理の基礎知識とコンプライアンス遵守のための改善戦略[工場改善の専門家が徹底解説]

工場を運営し、持続可能な製造業を目指す上で、大気汚染対策や廃棄物管理と並んで極めて重要なのが「水質管理」です。その中心となる法律が「水質汚濁防止法(以下、水濁法)」です。工場改善の専門家として断言しますが、水質汚濁防止法を軽視することは、単なる行政罰のリスクだけでなく、地域社会からの信頼失墜、さらには操業停止という経営上の致命傷を招きかねません。

昨今、SDGs(持続可能な開発目標)への関心が高まり、サプライチェーン全体での環境負荷低減が求められる中、工場排水の質を適正に保つことは、企業の市場競争力を左右する重要なファクターとなっています。本記事では、水質汚濁防止法の全体像から、工場が遵守すべき排出基準、地下水汚染対策、具体的な工場改善手法、そして最新のデジタル技術を活用した監視体制まで、徹底的に解説します。

水質汚濁防止法とは何か:その目的と工場の責務

水質汚濁防止法は、工場や事業場から公共用水域(河川、湖沼、港湾、沿岸海域など)へ排出される水の汚れを規制し、国民の健康を保護するとともに生活環境を保全することを目的としています。

規制の対象となる「特定施設」

すべての工場が規制対象になるわけではありません。法律で定められた「特定施設」(自動式水洗施設、廃液を伴う製造工程など)を設置している事業場が「特定事業場」として規制の対象となります。工場改善の第一歩は、自社の設備が水質汚濁防止法上の特定施設に該当するかを正確に把握することです。

排出事業者の法的義務

特定事業場となった工場には、主に以下の義務が課せられます。

  • 設置・変更の届出: 特定施設を設置または変更する際の事前届出。

  • 排出基準の遵守: 排水中の有害物質や生活環境項目の濃度を基準値以下に保つこと。

  • 測定と記録: 排水の状態を定期的に測定し、その結果を記録・保存すること。

厳格化される排出基準:有害物質と生活環境項目

水質汚濁防止法の規制対象は、大きく「有害物質」と「生活環境項目」の2つに分類されます。

健康項目(有害物質)

カドミウム、シアン、有機リン、鉛、六価クロム、水銀、トリクロロエチレンなど、人の健康に被害を及ぼす恐れがある28種類の物質です。これらには、全国一律の厳しい排出基準が設定されており、検出口(工場の最終出口)での厳格な管理が求められます。

健康項目(有害物質)の排水基準

人の健康に直接影響を及ぼす恐れがある物質で、全28項目あります。これらは業種や規模を問わず、特定施設を設置するすべての事業場に適用されます。

項目(有害物質) 許容限度(1Lにつき)
カドミウム及びその化合物 0.03 mg
シアン化合物 1 mg
有機リン化合物 1 mg
鉛及びその化合物 0.1 mg
六価クロム化合物 0.5 mg
砒素(ひそ)及びその化合物 0.1 mg
水銀及びアルキル水銀その他の水銀化合物 0.005 mg(検出されないこと)
ポリ塩化ビフェニル(PCB) 0.003 mg
トリクロロエチレン 0.1 mg
テトラクロロエチレン 0.1 mg
ジクロロメタン 0.2 mg
四塩化炭素 0.02 mg
ベンゼン 0.1 mg
1,4-ジオキサン 0.5 mg
ほう素及びその化合物 230 mg(海域以外 10 mg)
ふっ素及びその化合物 15 mg(海域以外 8 mg)
アンモニア、アンモニウム化合物等 100 mg(含有窒素量として)

専門家注: 水銀やPCBなどは、極めて微量でも「検出されないこと」が求められる非常に厳しい基準です。

生活環境項目

BOD(生物化学的酸素要求量)、COD(化学的酸素要求量)、SS(浮遊物質量)、全窒素、全リンなど、動植物の生息や水の利用に影響を与える項目です。これらは、海域や湖沼などの閉鎖性水域において「総量規制」が適用される場合があり、地域ごとの条例(上乗せ基準)にも注意が必要です。

 

生活環境項目の排水基準

主に水の汚れ(有機物)や、動植物の生息に影響を与える項目です。こちらは通常、1日の平均排水量が50立方メートル以上の特定事業場に適用されます。

項目 許容限度
pH(水素イオン濃度) 5.8〜8.6(海域 5.0〜9.0)
BOD(生物化学的酸素要求量) 160 mg (日間平均 120 mg)
COD(化学的酸素要求量) 160 mg (日間平均 120 mg)
SS(浮遊物質量) 200 mg (日間平均 150 mg)
n-ヘキサン抽出物質(油分等) 5 mg (鉱油類) / 30 mg (動植物油脂類)
フェノール類含有量 5 mg
銅含有量 3 mg
亜鉛含有量 2 mg
溶解性鉄含有量 10 mg
溶解性マンガン含有量 10 mg
全クロム含有量 2 mg
大腸菌群数 1cm³につき3,000個(日間平均)
全窒素含有量 120 mg (日間平均 60 mg)
全りん含有量 16 mg (日間平均 8 mg)

これらの規格はあくまでも国の基準値であり、工場のある都道府県、市町村の条例ではさらに厳しい基準が設定されている場合がありますので、必ず近隣の市町村役場で確認をしてみてください。

地下水汚染防止:2012年改正による構造基準の強化

水質汚濁防止法において、目に見えない排水以上に注意が必要なのが地下水汚染です。2012年の法改正により、有害物質を扱う施設の「構造基準」が大幅に強化されました。

有害物質を扱う特定施設の場合、たとえ外部へ排水していなくても、床面の亀裂や配管からの漏洩によって地下水を汚染しないよう、「構造基準(防液堤の設置や目視点検が可能な構造)」を守る義務があります。

測定と記録の義務

水質汚濁防止法では、排出状況を定期的に測定し、その結果を3年間保存することが義務付けられています。測定頻度は物質によって異なりますが、自主管理として毎日pHや色をチェックする「見える化」を行うことが、不測の事故を防ぐ工場改善の第一歩です。

構造・点検・管理の義務

有害物質を含む液体の貯蔵タンクや配管において、目視で漏洩が確認できる構造にすることや、防液堤(万が一の漏洩時に外へ出さない堤防)の設置が義務化されています。

  • 工場改善の視点: 古い工場では配管が地下に埋設されているケースが多く、これらを地上化(ピット化)することは、漏洩リスクの早期発見(予防保全)と法的遵守の両面で極めて有効な改善です。

コンプライアンス遵守のための工場改善アプローチ

法律を守るだけでなく、コストを抑えながら環境負荷を下げるための工場改善手法を解説します。

排水の「見える化」と流量管理

IE(インダストリアル・エンジニアリング)の視点を用いて、どの工程から、いつ、どの程度の排水が出ているかを調査します。

  • DXの活用: WiFiなど無線インフラを活用したスマート水計や水質センサーを導入し、リアルタイムでBODやpHをモニタリングします。異常値が出た際に自動でバルブを閉じるインターロックを設けることで、コンプライアンス違反を物理的に防ぎます。

排水処理設備の最適化と5S

排水処理施設は工場の「腎臓」です。

  • 5S活動の徹底: 処理施設の周辺が汚れていれば、小規模な漏洩(にじみ)に気づけません。常に「清潔」を保ち、薬剤の在庫管理や計量ポンプの定期点検をルーチン化することが、安定した水質を維持する秘訣です。

汚染源の「断ち切り」改善

最も効果的な改善は、有害物質を工程で使用しない、あるいは排出しないことです。

  • 原材料の代替: 重金属を含まない薬剤への転換(目標12:つくる責任 つかう責任)。

  • クローズドシステムの構築: 洗浄水を循環利用(リサイクル)し、外部への排水量をゼロ(ゼロ・リキッド・ディスチャージ)に近づける。

労働安全衛生と水質管理の連動

排水管理は、外部環境だけでなく、内部で働く従業員の労働安全衛生とも密接に関係しています。

薬品取り扱い時の安全確保

排水処理に使用する硫酸、苛性ソーダ、凝集剤などは、人体に有害な劇物です。

  • 保護具の徹底: 上着や防護メガネ、手袋の着用を徹底し、万が一の飛散に備えて洗眼器を処理施設付近に配置します。これは労働安全衛生法に基づいた基本的なリスク管理です。

暑さ指数(WBGT)と屋外作業

排水処理施設は屋外にあることが多いため、夏場の点検作業は熱中症のリスクが高まります。暑さ指数(WBGT)を測定し、適切な休息を取らせることは、水質を守る担当者の安全を守る上で不可欠です。

地域社会との調和:半径800m圏内の信頼

工場からの排水トラブルは、一瞬で地域の水環境を破壊します。

水質事故への備え

もし、事故により有害物質が流出してしまった場合、半径800m以内の近隣住民の農地や漁場、下水道への影響は計り知れません。まずは絶対に漏らさないという設備の準備が必要です。

  • 緊急時マニュアルの整備: 土のうの設置、中和剤の投入、自治体への迅速な報告体制コンプライアンスを緊急事態のマニュアル等を準備しておく必要があります。

騒音対策とのセット改善

排水処理の曝気(エアレーション)用ブロワーは、意外と「うるさい」という苦情の原因になります。防音カバーの設置や低騒音型への更新は、周辺環境へのトータルな配慮として重要です。

まとめ:水質汚濁防止法を「攻めの経営」の基盤に

工場改善の専門家として最後に強調したいのは、水質汚濁防止法への対応を「コスト」ではなく「持続可能な成長のための投資」と捉えることの重要性です。

  • 法的リスクの解消: 徹底した管理により、罰則や操業停止リスクをゼロにする。

  • 資源効率の向上: 排水改善は、節水(水道代削減)や薬剤費の最適化に直結する。

  • 企業価値の向上: クリーンな排水を実現する工場は、採用においても、ESG投資の対象としても選ばれる存在になります。

本記事で解説した視点を持ち、現場の5SIE、そしてデジタル技術を融合させた「水質管理の高度化」を推進してください。その一歩が、地域と地球に優しい「世界水準の工場」への道標となります。

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