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高酸素濃度では、実際身体はどうなるのだろうか?実際酸素濃度は、濃い、薄いで人には影響の高いと言われています。また、健康にもどう影響するのだろうか?

高酸素濃度は身体に悪い?

酸素濃度と身体への影響

地球上の好気性生物にとって、酸素は必要不可欠な栄養素です。細胞内のミトコンドリアで、活動エネルギーであるATPを作り出す時に必要としているのが酸素です。

この酸素なんですが、実は高酸素濃度でも、低酸素濃度でも、実は人は身体にダメージを受けてしまうものなのです。

人が普通に生活していくため、地球上での酸素濃度は、約21%の濃度に維持されているのですが、最低でも、人が活動する場所においては、18%以上の酸素濃度が必要なのです。高酸素濃度であれば、良いかというとそうでは無く、60%以上の高濃度酸素は12時間以上吸入すると、肺に充血をきたし、失明、死亡につながる、恐れがあるのです。ちなみに、6%以下の低酸素濃度では、数回の呼吸で意識を失って、窒息死してしまいます(表1)。

表1.低酸素濃度による身体への影響
酸素濃度 症状・概要
21% 通常、空気中の酸素濃度
18% 安全の限界=連続換気が必要で頭痛など発生する。
16~14% 細かい筋肉作業がうまくいかない 、精神集中に努力がいる、脈拍、呼吸数の増加 、頭痛、吐き気が発生
12% めまい、吐き気、 筋力低下が起こり、判断がにぶる
10% 顔面蒼白、意識不明、嘔吐、気管閉塞で窒息死
8% 失神昏倒、7~8分以内 に死亡
6% 6分で死亡

高濃度酸素の投与限界

高濃度酸素は、人体に傷害となります。周りの空気と混ざって実際に気道の中に入ってくる酸素濃度の事を吸入酸素濃度といいますが、例えボンベから、100%酸素を吸ったとしても、酸素の流量が低ければ、周りの空気も一緒に吸うため、気道内での酸素濃度はねそれほど高くならないのです。

実際入り用現場では、次の表のような投与限界が知られています。

表2酸素濃度と投与時間
吸入酸素濃度 投与限界時間
100% 6時間以内
80% 12時間以内
50% 48時間以内

Ⅱ型呼吸不全と呼ばれ、肺での換気が十分に行われないために、血液中の炭酸ガス濃度が高くなってしまった病気の患者さんは、高濃度の酸素を吸うとCOナルコーシスを起こす可能性があります。

高酸素濃度が身体を壊すのに、何故治療として使用する?

実は、高濃度酸素だから毒性があるという単純な問題では無く、その酸素が何気圧あるのかも係わってくるのです。酸素濃度と気圧の積を「酸素分圧」といい。この酸素分圧が高すぎる事で、人は死んでしまうのです。

例えば、宇宙飛行士の宇宙服では、純水な100%酸素を使っています。先ほどの説明によって限界6時間となりますが、何日も活動しています。実は気圧を0.2気圧程度まで、下げているのです。大気圧1気圧の時に約20%の酸素濃度なのと、酸素分圧としては、同じになるのです。逆に2気圧の環境化であれば、酸素濃度が、10%になったとしても窒息する事はありません。

酸素中毒は、酸素分圧が原因

超高酸素分圧の酸素を摂取した場合、やある程度高酸素分圧の酸素を長期にわたって、摂取し続けると酸素中毒という状態になります。そして、身体に様々な以上を発して、最終的には死に至る症状になります。もちろん医療現場で実施しているように、高酸素分圧の状態であっても、制限時間内であれば、問題無いとされています。

特にスクーバダイビングなど、空気あるいは混合ガスを用いての潜水時に起こりやすい事故です。酸素濃度21%の状態で、深度の潜水をすると、高圧環境下での作業となることから、高酸素分圧になり、酸素中毒をおこしますが、初期のアポロ計画のように、船内気圧を1/3気圧にして、純水酸素とい高酸素濃度で、船内を満たしていても身体への問題はありません。

潜水作業による、酸素中毒の問題

酸素は、人間の生命活動をする上で、なくてはならないものですが、潜水中に呼吸するガスに含まれている酸素の分圧が2気圧を超えると、全身の激しい痙攣(けいれん)が発症して最悪の場合死亡する。このような状態を急性の酸素中毒と呼びます。

潜水作業は酸素分圧がそれほど高くなくても、長時間にわたって潜水作業をすると、ある程度高い酸素分圧にわたって呼吸をする事で、肺の障害など、様々な症状が発生します。これを慢性の酸素中毒と呼ぶ事もあります。

急性ないし慢性の酸素中毒を防ぐためには、呼吸ガス中の酸素分圧を1.4気圧以下、特別な場合でも1.6気圧以下に保つようにするのと、酸素分圧に応じた潜水時間の制限を設ける必要があります。

スクーバダイビングによる潜水と酸素ボンベ濃度

スクーバーダイビングで、使っている、呼吸用のタンクの事を「酸素ボンベ」と呼びます。今まで書いてきた事から言うと、酸素濃度100%の高酸素濃度を呼吸した場合、水深10m以上へ潜水する事でほぼ確実に急性酸素中毒になって死に至ります。

スクーバダイビングで使用するのは、通常は、普通の空気(大気)です。もちろん空気潜水であっても水深70m以上酸素分圧は1.6気圧で、急性酸素中毒になる可能性が高く、窒素中毒に対する耐性が高くとも、空気潜水では、このような大深度までの潜水は非常に危険である。

高酸素濃度

高酸素濃度の酸素中毒と身体の傷害

酸素中毒になると、次のような代表的な症状があり、臓器に傷害が発生します。

中枢神経 傷害

高酸素分圧条件下で、発生する意識喪失に行き続いた痙攣を特徴とします。

中枢神経系の酸素中毒は、痙攣、意識喪失に引き続く短時間の硬直の発作が発生する可能性があり、大気圧よりも高い気圧にさらされるダイバーは特に注意が必要な問題です。

肺 傷害

長時間の高酸素分圧下の環境で、呼吸困難と胸の痛みが発生する。肺への酸素中毒によって、胸の痛みや呼吸困難を伴う肺の損傷をもたらす。

眼(網膜症) 傷害

長時間の高酸素分圧下の環境での呼吸時に発症する。眼の変化が特徴である。眼に対する酸化的損傷は、近視や網膜の部分的な剥離を引き起こす可能性がある。

肺や眼への損傷は、特に新生児の治療の一環として行われる酸素補給の際に最も発生する可能性が高く、また、高圧酸素療法中にも同様な損傷が懸念される。

酸素による、酸化的損傷は体の任意の細胞で発生する可能性があるが、特に影響を受けやすい三大臓器への影響が最初に懸念される。

また、酸化的損傷は、赤血球の破壊(溶血)、肝臓への損傷(肝炎)、心臓(心筋)、内分泌腺(副腎、生殖腺、甲状腺)、または腎臓(腎炎)に関与する可能性があり、細胞へ一般的な損傷を与え得る。

通常では、おこらない異常事態として、最新の研究によると、宇宙飛行時の高酸素濃度は、骨の損傷に影響するかもしれない事が疑問視されている。高酸素濃度も、間接的には慢性閉塞性肺疾患や呼吸中枢抑制のような肺疾患患者に「二酸化炭素酔い」を引き起こす可能性もある。

酸素の毒性は、常に大気圧の空気を呼吸する過換気に関連づけられていない。なぜなら、大気圧の空気は0.21bar(パール)(21kPa)の酸素分圧(PPO2)であり、酸素中毒の下限値が0.3bar(バール)(30kPa)であるためです。

酸素中毒が発生するメカニズム

酸素中毒の原因としては、、酸素の正常な代謝によって発生する自然な副産物です。細胞の電子伝達系において、重要な役割をしている酸素は、電子の部分的な還元によって活性酸素が発生する。

体内で発生した、スーパーオキシドアニオン(O2は、多分鉄の補足に関与していると考えられます。通常の濃度よりも高い、高酸素濃度の状態は、活性酸素の濃度も高めます。酸素は細胞の代謝に必要であり、血液は身体のすべての部分に酸素を供給しています。高分圧の酸素を吸い込むと、高酸素状態が急速に広がっていき、最も血管が張り巡らされた臓器が最も弱い立場となり、損傷を受けやすいのです。

環境的なストレスのもとで、活性酸素の濃度は劇的に増加し、細胞構造に損傷を与え、酸化ストレスを形成していくのです。

体内でのこれらの活性酸素種のすべての反応メカニズムはまだ完全には解明されていないが、最も反応性の高い酸化ストレスはヒドロキシルラジカル(・OH)であり、これは細胞膜の不飽和脂肪酸に対して有害な過酸化脂質の形成の連鎖反応を発生させる脂質過酸化反応を引き起こします。

高濃度酸素は、DNAや他の生体分子を傷つける窒素酸化物、ペルオキシニトライトおよびトリオキシダン(三重酸素)などの他のフリーラジカルの形成を増加させる。生体内の酸化ストレスに対する防御機構は、酸化ストレスに対抗するグルタチオンなどの多くの抗酸化システムを持っているが、最終的には非常に高い濃度の遊離した酸素に圧倒され、細胞の酸化損傷が高まり、それを修復するシステムの容量を超えてしまう。細胞の損傷と細胞死はその結果である。

酸化損傷を防ぐ 水素の存在

70m以上の深度で、潜水をする場合、酸素ボンベの場合、酸素分圧を下げるため、水素濃度49%、ヘリウム50%、酸素濃度1%のような、深海潜水用の混合ガスを利用する場合がある。窒素酔いや、深海で潜水する時の減圧症の予防に効果があるとされており、長期にわたって使用されているが、副作用の報告はされていません。

実際、酸素中毒が、活性酸素の影響によるものが多いため、高酸素分圧になりやすい状態での水素ガスの利用は、酸素中毒の防止に繋がります。どちらにしても、高酸素濃度は、身体への影響が高いため、注意が必要です。

 

参考資料

酸素中毒

酸素濃度が高すぎても、人は死ぬって本当?

酸素濃度と人体への影響

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