活性酸素は、体を錆させるとい事で、非常に嫌われているものです。実際どんなものがあるか、また どうすると活性酸素が発生するのでしょうか?活性酸素の発生のメカニズムと対策についてまとめてみました。
活性酸素の発生と対策について
活性酸素とは
活性酸素 英語では、Reactive Oxygen Species ROSと略されます。大気中の酸素分子が、より活性化、反応性の良い形のものの総称となります。
代表的な活性酸素は、スーパーオキシドアニオンラジカル(一般的にはスーパーオキシド)、ヒドロキシルラジカル、過酸化水素、一重酸素の4種類があります。
活性酸素は、血管の障害を促して、老化や癌化の原因となります。そんな活性酸素は、実は1日約10億個も発生していると言われており、これに対して、生体内の抗酸化物質によって、活性酸素の働きを押さえ込むが、全部の活性酸素に対して、抗酸化作用を行う事は出来ず。1日に数万~数十万個が、活性酸素によって酸化損傷されています。特に細胞膜のリン酸脂質を酸化させたり、その中野DNA、タンパク質を酸化損傷させたりします。
摂取カロリーを制限したり、筋肉を使った運動をすると、活性酸素の体内の除去能力が向上したりします。
体内の活性酸素が発生する原因
活性酸素が老化の原因となることは、最近になって広く知られるようになってきました。「抗酸化」という言葉もあちらこちらで目にする機会が増えたことでしょう。 一方で、そもそもどうして活性酸素が体内に発生するのかまでは分からない人も多いのではないでしょうか。 活性酸素を減らすためには、抗酸化作用のある成分を摂取することも有効ですが、はじめから体内で作られる量を減らすことができるのであれば、それに越したことはありません。
いつもの食事
人は、生きるために、朝昼晩と食事をして、呼吸をしています。実はこの行為が活性酸素を発生させているのです。実は、この時に1番活性酸素が発生していると言われています。呼吸によって取り入れた酸素は、食事の栄養素をエネルギーに変えるために働きますが、その実に1~3%(一般的には約2%)が活性酸素に変化すると言われています。
体内で発生する、活性酸素の実に90%が、食事より発生していると言われています。
これは、ミトコンドリアでのエネルギー代謝(電子伝達系)で大量に活性酸素が発生するからです。
ストレス
ストレスを受けると、身体には様々な反応をするのですが、ストレスを緩和しようと副腎皮質ホルモンが発生するのですが、その時に活性酸素も作られてしまうのです。ただタイミングとしては、ストレスを受けて緊張状態よりも、ストレスから開放されて、緊張がゆるんだ時に活性酸素が大量に発生すると言われています。
また、ストレスが溜まっている状態は、活性酸素も体内に多いので、ビタミンC(アスコルビン酸)などの抗酸化物質の消費量も増加します。ビタミンC(アスコルビン酸)には、ストレスを和らげる効果があるためなのですが、ストレスが多くなると、体内のビタミンC(アスコルビン酸)の量も減っていってしまうため、活性酸素の勢力が強くなってしまうと言われています。
紫外線
紫外線を浴びる事で、免疫反応のひとつとして、身体を守るために、活性酸素が発生します。特に肌に直接浴びていると、肌の細胞を活性酸素が攻撃していまうため、シミなどの肌トラブルの原因となっているのです。また、最新の研究では、シミは、表層のみと思われていましたが、活性酸素が原因なため、肌の深部に、シミが出来ている事が判っています。
喫煙
タバコも活性酸素発生の原因のひとつです。タバコには、タールを代表とされる、有害物質が体内に入りますので、細胞を守るために活性酸素が増加します。また、タバコには、血管を収縮させる機能があり、血管の膨張時に、活性酸素が発生すると言われています。ただ、喫煙者だけで無く、近くにいる人も副流煙という形で、吸い込んだ場合、同様の現象が発生しています。
過度な飲酒
アルコールは、適量であれば、血液の流れが良くなる事で、活性酸素を減らす手助けとなってくれます。しかしアルコールを分解する際にも、活性酸素が発生します。そのため、摂取量が多いと逆効果になります。活性酸素は、身体の免疫反応のひとつとして、身体にとって悪影響があると思われるものが、体内に入る事で発生します。そのため、飲酒も例外ではありません。
激しい運動
意外と思われるかもしれませんが、激しい運動も活性酸素が発生する原因のひとつです。これは運動によって呼吸が増えますので、取り入れる酸素量も多くなり、必然的に活性酸素の量が増加していくのです。運動は、血流の流れも激しくなりますので、血流の摩擦によって、活性酸素が、増加すると言われています。
環境ホルモン
活性酸素は、もともと、身体の免疫として、利用している事から、環境の有害物質が増える事で、増加すると言われています。日本では、少なくなって来たはずの環境ホルモンですが、中国などからの偏西風による、PM2.5や食事などに入っている、食品添加物、これらは、体内の免疫を過剰にさせる事で、活性酸素が発生する事が出来るのです。
その他、活性酸素は炎症時の白血球、アラキドン酸代謝、心筋梗塞の虚血-再灌流、抗ガン剤、除草剤などでも発生するのです。
活性酸素が原因される病気の数々
癌(ガン)
活性酸素の影響を受けて、1番重篤な病気としては、癌(ガン)が上げられます。活性酸素の影響で細胞膜が活性酸素によって過酸化脂質に変化します。この過酸化脂質も活性酸素のひとつなため、となりの正常な細胞をさらに酸化させて、同様の過酸化脂質をつくると連鎖酸化を起こします。通常、体内の抗酸化物質によって、連鎖をストップさせて、癌細胞を自殺させる事で、大きな問題にはならないのですが、抗酸化物質が足らないと、これが大きく広がっていき、癌として診断されるのです。
また、ニトロサアミン(ニトロソアミン)などの、発癌性物質と言われるものは、直接または、間接的にフリーラジカルを発生させる事で、癌(がん)を進行させるのです。
動脈硬化、血栓
細胞膜の主成分である、脂質は、血液中では、LDLなどのリボ蛋白として、運搬される。この脂質は、活性酸素(特にヒドロキシルラジカル)によって、酸化され、過酸化脂質となります。過酸化脂質は、癌の原因でもありますが、他にも動脈硬化や血栓の原因となったりします。
過酸化脂質は、細胞膜の機能を変化させたり、他のタンパク質を酸化させたりしてしまい、過酸化脂質が増大した酸化LDLは、血管内細胞の障害ともなり、動脈硬化を発生させたり、血栓の出来やすい体質にします。高齢者は、脳や肝臓に若い人の数倍の過酸化脂質が蓄積されている言われています。
心筋梗塞、脳梗塞
心筋梗塞や脳梗塞は、活性酸素の中のヒドロキシルラジカルや、一重項酸素によって、不飽和脂肪酸が酸化変性する事で発生します。酸化された、不飽和脂肪酸を含むLDLは、血管内皮細胞の障害につながり、動脈硬化や血栓が起こりやすい体質とな事で、その結果心筋梗塞や脳梗塞か発症します。ただ酸化LDLに含まれる、過酸化脂質し、生体内で活性酸素が原因で生成するものよりも、食事由来のものの方が多いといわれています。
糖尿病
2型糖尿病でよくみられるケースであるが、膵臓内にある、β細胞は、糖を分解するためのインスリンり発生をする、非常に大事な器官であるが、活性酸素の影響を受けやすいため、活性酸素によって、β細胞が機能不全となる事で、インスリンの発生が抑制されて、糖尿病が発症する。また、血管内が、高血糖状態となる事で、ミトコンドリアの電子伝達系によって、さらに活性酸素が、多く発生する事で、さらに重傷化すると言われている。
白内障
白内障は、糖尿病系の白内障と老人性白内障の2つがあるが、実際両方ともに、活性酸素が原因といわれています。糖尿病系白内障の場合、通常、ブドウ糖(グルコース)は、眼の水晶体の中で、sorbitaol pathwayで代謝されるのですが、ブドウ糖濃度が高いと、アドルース還元酵素によって還元される事で、ソルビトールが増加してしまい、糖尿病系白内障となってしまうのです。また糖尿病でも過酸化脂質の増加がおこるため、それも結果的に白内障となってしまう。
老人性白内障も過酸化脂質の増加が原因であるため、活性酸素の増加によって、過酸化脂質が増加する理由から活性酸素が影響が多いと考えられます。
老化の促進
活性酸素の影響で、DNAの塩基のひとつ グアニン(G)が酸化される事で、OHGと言う物質が発生します。OHG(8-ヒドロキシ-2-デオキシグアノシン)は、老化の数値として考える物質で、脳、肝臓、および心臓に残留存在しており、年齢を重ねる事で、多くなっていくものです。そのため、老化のマーカーとして考えられている物質です。
また、活性酸素の影響により、酵素淡白が酸化変性すると、酵素の活性が低下して、細胞の機能低下に繋がる。
寿命の短縮
活性酸素は、1回の細胞分裂あたりのテロメア短縮を大きくして、細胞分裂の回数も減らしてしまう事が判っていますので、全体的に寿命が短くなると言われています。カロテノイドを多く含む緑黄色野菜の摂取量が少ないと早期に発生すると言われており、寿命を早める結果となります。
皮膚のシミ
皮膚のシミについては、細胞内のリボソームの膜の不飽和脂肪酸が、活性酸素で酸化されて、生じる過酸化脂質と蛋白質の複合体がリポフスチンとして蓄積されると、シミとなります。
近年までは、紫外線にあたる、表皮特有のものとされていましたが、真皮や筋肉部分にもシミが出来る事が判ってきました。
アルツハイマー病
活性酸素によって、体内のアミノ酸が酸化されて生じるカルボニル化合物の量が、増加する事で、アルツハイマーになると言われている。また、神経細胞内コレステロール量が増加すると、アミロイドβ淡白が脳内で、重合(凝集)し易くなり、脳内に蓄積し、アルツハイマー病(痴呆症、認知症)を来すと考えられている。
腎臓障害
腎臓では、NADPHオキシターゼ やミトコンドリアで作られた活性酸素が作用して、障害を発生させる。腎臓では、アミノ酸のひとつである、L-アルギニンから、eNOSにより、一酸化窒素(NO)が生成される。一酸化窒素は、血管を拡張させ、血管を保護する機能があるが、活性酸素(スーパーオキシド)が反応する事で、ペルオキシナイトライト(ONOO–)と言う、強力な酸化因子が発生して、細胞障害を起こす。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、アレルギー疾患のひとつで、原因や対策方法については、確立したものは無いが、主に食事から発生した、活性酸素が、患部に作用して、炎症を起こすといわれています。また、炎症部分は、ヒスタミンが大量に分泌する事で、患部の炎症やかゆみが発生しています。そして、炎症した部分には、活性酸素が大量に発生している事も確認出来ております。
活性酸素の種類
様々な病気の原因となる、活性酸素とは具体的にどのようなものなのだろうか
一般に活性酸素はフリーラジカルと混同されることが多いのですが、活性酸素にはフリーラジカルとそうでないものがあります。
代表的な活性酸素としては、スーパーオキシド、ヒドロキシルラジカル、過酸化水素、一重項酸素の4つがありますが、スーパーオキシド、ヒドロキシルラジカルは、フリーラジカルの活性酸素に属し、過酸化水素、一重項酵素は非フリーラジカルの活性酸素に属します。
また、活性酸素といっても、そればかりだけでは無く、様々な活性酸素があります。
広義の活性酸素
名前は、聞いた事があるが、活性酸素としては、あまり認知されていないが、広義では、活性酸素の部類に入るものとしては、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(ONO)、オゾンO3、そして過酸化脂質である。
狭義の活性酸素
狭義の活性酸素は、一般的に活性酸素として、認識の高い成分で、スーパーオキシドアニオンラジカル(スーパーオキシド)O2・–、ヒドロキシルラジカル HO・、ヒドロペルオキシルラジカルHO2・過酸化水素HOOH–、一重項酸素1O2の5つがあげられます。
そして、スーパーオキシドやヒドロキシルラジカルは、フリーラジカルであり、過酸化水素、一重項酵素については、普通の活性酸素であります。
フリーラジカルとは
電子は、原子核の周りの電子軌道に、電子雲として、存在します。ただ、公転に相当するような動きはするが、ラザフォード模型のように、実際核の回りを回っているわけでは無い。そして電子は、自転に相当する、「スピン」と呼ばれる角運動量をもっている。鉄、コバルト、ニッケルは電子のスピン角運動量のため、磁気モーメントを持っているため、磁気が発生します。
電子の持つスピン角運動量の量子数は、スピン量子数で表されるが、2種類に限られます。上向き(↑)で表されるスピン量子数ms=1/2のαスピンと、下向きの矢印(↓)で表されるms=-1/2のβスピンである。
電子は、2つの状態の内、いずれかの状態しかとる事が出来ない。どんな軌道でも電子2個までしか、同一軌道内に存在出来ない。またその電子は、互いに逆のスピンを持っていなければならない。(パウリーの禁止原理)
そのため、原子や分子には、ひとつの電子軌道に、互いに逆向きのスピンの電子2個が対になって存在していると、互いのスピンを打ち消しあう事で、スピン量子数が0となり安定している。この0の状態は、一重項状態と呼ばれる。
ひとつの電子軌道に、電子がひとつしか無い場合その電子の事を不対電子と呼び、化学記号では、「・」が付けられる。不対電子をセルフでやる場合有する、原子や分子をフリーラジカルと呼び、他の分子から、電子を1つ奪って対になろうとする。
そのため、反応性が高い活性酸素なのである、スーパーオキシド、ヒドロキシルラジカル以外にも、広義の活性酸素である、一酸化窒素(NO)や塩素(Cl)もフリーラジカルのひとつである。
活性酸素(フリーラジカル以外のもの)
活性酸素は、普通の酸素分子O2よりも、活性化された状態の酸素分子とその関連物質を指します。
もともと、酸素原子(O)には、8個の電子が存在していますが、最外殻軌道(L殻)に6個の電子が存在しています。K殻の1s軌道に2個、L殻の2s軌道に2個、2p軌道に4個の電子を持っています。
L殻の6個の電子の内、4個の電子は、結合性の2つの軌道にスピンが対になって存在しています。しかし2p軌道に存在する、残り2個の電子は、同じスピン向きのため、不対電子が2個存在する形になります。これは、酸素分子となって、2つの酸素原子がくっついた時にも、2つの不対電子は対となるが、不対電子を2つもった状態となります。この状態をピラジカル(・O-O・)と言われ、活性酸素までは行かないが、酸素分子にも活性力が存在します。そのため、酸素分子の量子数は1となります。
このような活性酸素分子種としては
1)ラジカル種(フリーラジカル)
スーパーオキシド(O2・–)、ヒドロキシルラジカル(HO・)、ヒドロペルオキシルラジカル(HOO・)、アルコキシラジカル(LO・)、アルキルペルオキシルラジカル(LOO・)、一酸化窒素(NO)、
2)ノンラジカル種
過酸化水素(H2O2)、一重項酸素(1O2)、ペルオキシナイトライト(ONOO–)、脂質ヒドロペルオキシド(LOOH)、次亜塩素酸(HOCl)、オゾン(O3)
などがあります。
活性酸素のうち、スパーオキシドとヒドロキシルラジカルは、1個の不対電子を持っており、フリーラジカルとして、他の分子から電子を奪って、酸化させる。なお、水素原子(原子核1ケ、電子1ケからなる)も、k殻に不対電子を持っており、水素ラジカルで、H2の形で互いの電子を共有結合し、安定する。
代表的な活性酸素の性質
スーパーオキシド(O2・–)
細胞内のミトコンドリアでは、内膜を電子が伝達される(電子伝達系)のと共役して、水素イオンが膜間スペース(膜間腔)に汲み出され、エネルギー(ATP)が産生される。
呼吸により取り入れた酸素分子(三重項酸素:3O2)は、ミトコンドリアの内膜の電子伝達系の複合体IVで、伝達された電子により、四電子還元され、水(H2O)が生成される。しかし、この際、約2%の酸素分子は、一電子還元され、スーパーオキシド(ス-パーオキシドラジカルアニオン:O2・–)も、生成されてしまう。なお、ミトコンドリアの電子伝達系の複合体 スーパーオキシド(superoxide)は、白血球(好中球)内で細菌を殺す際に、生成される。スーパーオキシドは、キサンチン酸化酵素によっても生成される。アロプリノールは、キサンチン酸化酵素(キサンチンオキシダーゼ)を阻害し、活性酸素の産生を抑制する(ラジカル産生抑制薬)。赤血球のヘモグロビンの鉄と結合した酸素からも、スーパーオキシドが、生成されるという:
Fe2++O2→Fe3++O2–
フェントン反応で生じる三価の鉄イオン(Fe3+) は、スーパーオキシドにより還元され、Fe2+に戻る。
O2–+Fe3+→O2+Fe2+ (ハーバー・ワイス反応:Harber-Weiss reaction)
また、銅はスーパーオキシドにより還元されたり、酸素を酸化させる。
O2–+Cu2+⇔O2+Cu1+
酸素分子(O2)は、不対電子を、2個持っている。スーパーオキシド(・O2–)は、酸素分子(三重項酸素)に、電子が1ケ入って、不対電子の数は、1ケに減っている。 スーパーオキシド(・O2–)は、多量に発生するが、酸化力は弱い。スーパーオキシドは、特に、核酸と反応する。スーパーオキシドは、ラジカルとしての反応性は低く、酸化障害には直接寄与は、しないと考えられている。また、体内でスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)により、過酸化水素に代謝される:
2O2–+2H+→O2+H2O2
高脂血症や高血圧は、血管内皮細胞のスーパーオキシドの発生を増加させる。スーパーオキシドは水溶性だが、連鎖的脂質過酸化反応に関与する。NADPH酸化酵素(NADPHオキシダーゼ)は、血管内皮細胞の表面に存在し、種々の刺激で、容易に活性化され、スーパーオキシドを産生する。ディーゼルエンジンの排気ガス粒子(DEP:Diesel-Exhaust-Particles)を吸入すると、肺の中で、スーパーオキシド(・O2–)→過酸化水素(H2O2)-(フェントン反応)→ヒドロキシルラジカル(HO・)と反応が進み、肺の細胞に障害がおこり、浮腫などが出来ることが、生体計測ESRで確認された。
また、スーパーオキシドは酸素分子から生成される最初の活性酸素で、他の活性酸素の前駆体であり生体に取って重要な役割を持つ一酸化窒素と反応してその作用を消滅させる。
過酸化水素(H2O2)
過酸化水素は、酸化力は弱いが、安定していて、寿命が長い。過酸化水素は、細胞中の鉄イオン(Fe2+)や銅イオン(Cu1+)などの触媒作用(金属イオンは、電子を供給する)で、ヒドロキシルラジカル(HO・)に変化する:
Fe2++H2O2 →Fe3++HO–+HO・ (フェントン反応)
Cu1++H2O2 →Cu2++HO–+HO・
過酸化水素は、鉄イオン媒介ハイパー・ワイス反応によっても、ヒドロキシルラジカル(HO・)に変化する。
O2–+H2O2→HO・+HO-+O2
過酸化水素は、ミエロペルオキシダーゼの作用で、さらに毒性の強い次亜塩素酸(HOCl)にもなる。過酸化水素と次亜塩素酸は、好中球で殺菌作用をする。
過酸化水素の標準酸化還元電位は、1.35mVと高く、電子を引き抜く作用があるが、酸化力は、酸化チタンよりは、弱い。過酸化水素は、細胞膜を容易に通過する。赤血球では、血漿中で生成された過酸化水素が、細胞膜を通過し、赤血球内の3価鉄の存在下、フェントン反応などにより、ヒドキシルラジカルに変化する。ヒドキシルラジカルは、細胞膜内側から膜障害を来たし、赤血球を溶血させると言う。
ウイルソン病では、血清銅は減少するが、遷移金属として作用する銅(アルブミンと結合している)は、増加している。2価銅は、生体膜蛋白のSH基により1価銅に還元される。1価銅は、安定な2価銅に戻る際に、酸素に電子を与えるので、スーパーオキシドが生成させる。スーパーオキシドは、(血漿中で)不均化反応により、過酸化水素になり、さらに、過酸化水素は、1価銅により、ヒドロキシルラジカルになる。
ヒドロキシルラジカル(HO・)
ヒドロキシルラジカル(hydroxyl radical)は、存在するのは100万分の1秒間と寿命が短いが、酸化力は強く、酵素蛋白質や細胞骨格蛋白質、脂質、糖質、核酸(DNA、RNA)などと反応する。
ヒドキシルラジカルは、特に、脂質を連鎖的に酸化させてしまう。活性酸素の中でも、極めて高い反応性が高いラジカルで、活性酸素による、細胞の酸化損傷の原因は、このヒドロキシルラジカルとされています。
この連鎖的脂質過酸化反応を停止出来るのは、抗酸化物質の、ビタミンE。
ヒドロキシルラジカルは、過酸化水素は、活性酸素の中で、反応性はそれほど高くなく、生体温度では安定しいるが、金属イオンや光によって、分解して、ヒドロキシルラジカルを生成する。
Fe2++H2O2→Fe3++HO–+HO・ (フェントン反応)
2分子のヒドロキシルラジカルは、過酸化水素に戻る:
・OH+・OH→H2O2
ヒドロキシルラジカルは、スーパーオキシドと反応する:
・OH+O2–→-OH+O2
ヒドキシルラジカルは、過酸化水素と反応する:
・OH+H2O2→H2O+HOO・
ヒドロキシルラジカルは、グルタチオンと反応して消去される:
・OH+GSH→H2O+GS・
グルタチオン(glutathione)は、アセチルシステイン(N-acetylcysteine:NAC)から合成される。N-acetylcysteineを摂取して、細胞内のグルタチオン濃度を高めると、ミトコンドリアや細胞が、活性酸素の障害作用から、防御される。N-acetylcysteineは、それ自身、抗酸化作用(antioxidant properties)がある。
また、機序は不明だが、パントテン酸(pantothenic acid)を投与して、細胞内のCoA量を増加させると、グルタチオン濃度が高まる。ヒドキシルラジカルは、細胞膜を構成する脂質と反応し、過酸化脂質が蓄積する(連鎖的脂質過酸化反応)。過酸化脂質自体にもラジカル作用があり、他の物質を酸化させる
一重項酵素(1O2)
一重項酸素の生成には、まず、基底状態の酸素分子(三重項酸素、3O2)が、光などのエネルギーを吸収し、励起状態になり(電子遷移)、反結合性の軌道の不対電子1個が、スピンの向きを変えると、3Σg+の一重項酸素になる。さらに、3Σg+の一重項酸素では、速やかに、反結合性の軌道の不対電子が、別の軌道に入る。そして、別の軌道に存在した、異なるスピンの不対電子と、対になって、互いのスピンを打ち消すようになったのが、1⊿gの一重項酸素。通常の反応に関与するのは、1⊿gの一重項酸素で、三重項酸素(基底状態の酸素分子)より、94.1kJ/mol、エネルギー準位が、高い。スーパーオキシドが、電子を受け取って生じるのに対して、一重項酸素は、エネルギーを吸収して、生じる。
一重項酸素は、不対電子を持たないが、「空の軌道」が、2ケの電子を強く求めるため、強力な酸化力を発揮する。一重項酸素は、不飽和脂肪酸と反応して、過酸化脂質を生じる。一重項酸素は、皮膚で紫外線が当たる際に発生し、コラーゲンやエラスチンなど皮膚の若さを保つ蛋白を破壊する。
一重項酸素は、電子を奪って、スーパーオキシドになる:
A+1O2→A++O2– 一重項酸素は、再び、基底状態の酸素(三重項酸素)になる時に、近赤外領域の波長(1.27μm)で発光する。一重項酸素は、抗酸化物質でも、カロテノイドが消去する。カロテノイドには、細胞膜で作用するカロテノイド(リコピン、α-カロテン、β-カロテン)と、細胞内で作用するカロテノイド(ルテイン)が、存在する。
食事から摂取したカロテノイドは、細胞(細胞膜や細胞内)に移行し、1~2日間、活性酸素(一重項酸素)の消去に有効と言われる。β-カロテンは、紫外線により発生する一重項酸素を消去し、皮膚のシミなどを改善・予防する。ニンジンは、茹でると、β-カロテンの腸からの吸収が高まる。茹でたニンジンを摂取した場合、生のニンジンを摂取した場合に比して、血中のβ-カロテン濃度は高く摂取6時間後で平均1.4倍、摂取8時間後で平均1.6倍、血中のβ-カロテン濃度が高くなる。ニンジンを茹でたジュース(果汁)を飲むと、皮膚のシミが、改善する。ただし、同じ抗酸化物質のビタミンCやEには、一重項酸素の消去には、有効では無い。
活性酸素と人体の関係
多くの動物などの好気性生物は、生命維持に必要なエネルギー(ATP)を得るため、ミトコンドリアで絶えず酸素を消費している。これらの酸素の約2%は、代謝過程において活性酸素と呼ばれる反応性が高い状態に変換されると言われています。
呼吸時に活性酸素を生成するのは主にミトコンドリア中の電子伝達系の複合体Ⅲにおける反応である。
ユビキノール+2シトクロムc3++2H+in → ユビキノン+2シトクロムc2++4H+out
ユビキノン(Q)は複合体Ⅰ(NADH-CoQレダクターゼ)または複合体Ⅱ(コハク酸-CoQレダクターゼ)によって還元されてユビキノール(QH2)となる。
QH2は引き続いて1電子還元を行ってユビセミキノン(・Q-)へ、さらにもう1電子還元を行って元の酸化状態のユビキノン(Q)に戻るが、このときの不安定な中間体であるユビセミキノン(・Q-)は酸素と直接に反応してスーパーオキサイドアニオン(O2–)を生成しやすい。
このため人体では1日100リットル以上の活性酸素が発生していると言われている。しかし、実際の発生率は0.1-0.2%であるとも言われている。 発生した活性酸素・フリーラジカルは様々な物質に対して非特異的な化学反応をもたらし、細胞に損傷を与え得るために、その有害性が指摘されている。
それを防ぐために各組織には抗酸化物質と呼ばれる、活性酸素・フリーラジカルを消去あるいは除去する酵素が存在する。その抗酸化物質としてカタラーゼやスーパーオキシドディスムターゼ、ペルオキシダーゼなど、活性酸素を無害化する性質をもっている。
細胞内の抗酸化物質で分解しきれない余分な活性酸素は、自身の細胞などを傷つける事で、癌や生活習慣病、老化等、さまざまな病気の原因になると言われています。遺伝子操作によって活性酸素を生じやすくしたモデル動物などは、筋萎縮性側索硬化症になるケースもあります。なお、喫煙などによって活性酸素の増加が、細胞を傷つけ癌を増加させるのみでなく、ビタミンCの破壊を促進し、しみ、くすみなどの原因となるメラニンを増加させてしまうことが知られている。
ただ悪い事ばかりでは無く、活性酸素は高い反応活性によて、外部から入り込んできた異物(微生物)を排除することが出来るのがわかっている。 白血球などの好中球やマクロファージが体内の異物や毒物を認識し取り込み分解することは知られているがこの時に細菌などを分解するのに活性酸素が働いている。白血球(好中球)は、体内に細菌が侵入してくると捕獲(貪食)し、白血球はNAD(P)Hオキシダーゼを使ってNADH(NADPH)とH+と酸素を反応させて、過酸化水素を生成し、貪食されてもまだ増殖しようとする細菌を殺菌し感染から守る生体防御メカニズムを有する。
体内で取り込まれた酸素から発生する活性酸素以外に外的な要因で発生する活性酸素もある。紫外線や放射線などが細胞に照射されると細胞内に活性酸素が発生するのが知られている。これを利用したものに、癌治療として放射線治療などが有名である。 また活性酸素の呼ばれている物質の一部は、内因性に増殖の細胞内シグナルとして働く事が明らかになってきた。 このように生体と活性酸素の関係の有害・有用の両側面においての研究が行われている。
生物フォトン
体内に、活性酸素や、酸化ストレス増加すると、生物フォトンによる発光が、増加する。生物フォトン(バイオフォトン)による発光は、細胞内で、活性酸素により、ラジカル連鎖反応が起こる為と考えられている(リポキシゲナーゼ等の酸化酵素が、発光に関与する)。
食品加熱と活性酸素の関係
食品(肉や魚)を高温で加熱調理すると、蛋白質が熱変性を起こし、ヘテロサイクリックアミンが生成される。 ヘテロサイクリックアミンは、生体内で、N-水酸化体となり、エステル化されて、遺伝子DNA鎖を切断し、変異原性を現す。
ヘテロサイクリックアミンが、遺伝子DNA鎖を切断する際には、活性酸素(スーパーオキシドアニオン、過酸化水素、ヒドロキシラジカル等)が、関与する。
ブドウ糖とアミノ酸が共存する食品を、加熱調理すると、メイラード反応により、ヒドキシフラノン誘導体(芳香成分)が生成される。ヒドキシフラノン誘導体は、活性酸素を発生させ、DNA鎖を切断したり、組織障害を起こす。
電子レンジは、電磁波(2450MHzのマイクロ波)により、水分子を共鳴振動させ、水分子(双極子)を回転運動させ、電磁波のエネルギーが、熱運動エネルギー(摩擦熱)に変換され、食品の温度が上昇する。電子レンジ調理では、水は、100℃までしか温度が上昇しない(油は、電磁波の吸収効率が、水より低いが、温度は100℃以上に上昇する)。
ビタミンC残存率は、電子レンジで調理した方が、従来調理(煮沸など)より、多い(水さらし液や、煮汁へ溶出率が少ない)。ほうれん草の場合、ビタミンC残存率は、電子レンジ調理が82%なのに対して、従来調理は69%。ビタミンB1残存率も、電子レンジ調理の方が、5~15%多い。 電子レンジで調理した方が、従来調理(煮沸など)より、残存率が高いのは、水さらしがない為に、溶出率が低い為。
従来調理(茹でる調理)では、「あく」(Ca、Mg、Kなどの無機塩類、タンニン、アルカロイド、サポニン、配糖体、有機酸等を含む、辛味や渋味の不味成分)が、水に溶出する。特に、野菜は、「あく」の有機酸が、加熱により壊れた組織から、溶出するので、クロロフィルの色が悪化させない為に、水さらしする必要がある。
「あく」は、電子レンジ調理では、食品中に、多く残る(タンニン等は、抗酸化物質としての作用も、期待出来る)。ワラビ(蕨)は、「あく」(灰汁)として、タンニン(ポリフェノールの1種)や、ビタミンB1破壊酵素を含んでいるので、動物(鹿等)は、ワラビ(蕨)を食べない。
電子レンジにより、水分子は、マイクロ波による電界の変化に追従して動く。しかし、蛋白質や澱粉のような巨大分子は、電界の変化に追従出来ず、末端基が振動する程度に過ぎない。 電子レンジ調理(マイクロ波加熱)は、蒸した場合より、細胞の変形は大きいが、細胞壁の損傷は、少ない。
電子レンジ調理では、蒸した場合に比して、食物繊維のペクチンが、水溶化しにくいので、柔らかくなり難い(シャキシャキした歯応えになる)。 電子レンジ調理では、脂質の酸化の度合いは、従来調理(オーブン等)と同等と言われる。電子レンジ調理では、中性脂肪の劣化は、オーブンより少なく、リン脂質の劣化は、オーブンより多いと言う。
一般に、加熱調理により、抗酸化物質(ビタミンC、ポリフェノール等)は、酸化酵素の活性が失われるので、残存しやすくなる。そして、特に、電子レンジ調理では、煮たりした場合に比し、抗酸化物質が、茹で汁中に流出しないので、残存率が高くなる。
電子レンジ調理では、水の温度は100℃までしか上昇しない(焦げ目が付かない)ので、発癌性のある焦げ物質(ジメチルニトロソアミン)、トリプトファン加熱分解産物の発生量が、ガス火加熱より少ない:魚肉中のジメチルニトロソアミン量は、生肉中0.1~1.0μg/kg、ガス火加熱0.2~2.0μg/kg、電子レンジ調理0.1~0.60μg/kg。
精製した油脂(oil)は、電子レンジによる加熱調理により、酸化変性する。精製した油脂の電子レンジによる酸化変性は、セサモール(sesamol:リグナン)や、ビタミンE(tocophenol)を添加すると、著明に、抑制される。 大豆を、いろいろな水分濃度で、電子レンジにより焼いた実験結果では、大豆を、予め水に浸して(soaking)から、電子レンジで焼くと、ビタミンEの減少や、大豆油脂の酸化変性が、抑制された。水に浸した大豆は、電子レンジで20分間焼いても、ビタミンEは、80%以上が残存し、大豆油脂は、ほとんど化学的に変化しなかった(電子レンジで調理しても、ビタミンEが含まれていれば、油脂は、あまり、酸化変性しない)。
ビタミンEは、大豆では、軸に一番多く、次いで、子葉、殻に多く含まれる。大豆を(水に浸さないで)電子レンジで加熱すると、殻に含まれるビタミンEの40%が喪失するが、軸や子葉に含まれるビタミンEの80%以上は、保持される。なお、電子レンジで加熱すると、特に、殻の部位で、トリグリセリドやリン脂質や多価不飽和脂肪酸が減少する。大豆の軸や子葉に含まれるビタミンEは、電子レンジの調理しても、多くが保持される。
慢性肉芽腫症 慢性肉芽腫症(chronic granulomatous disease:CGD)
食細胞(好中球、単球)に存在するNADPHオキシダーゼの構成蛋白が、遺伝的に欠損し、食細胞の活性酸素産生能が欠如している。つまり活性酸素が発生させられない体質である。
慢性肉芽腫症(CGD)では、食細胞(好中球、単球)が、カタラーゼ陽性で過酸化水素(H2O2)非産生性の細菌(黄色ブドウ球菌、グラム陰性菌、結核菌)や、真菌を、殺菌する能力が低下している為、乳幼児期から、重症感染を反復し、肉芽腫が形成される。 慢性肉芽腫症(CGD)の遺伝形式には、伴性劣性(X-CGD)と、常染色体劣性(A-CGD)との2型がある。
悪者とされる活性酸素ですが、このように、発生量が減少する事で、別の問題が発生するのです。
増えすぎた活性酸素への対処法(抗酸化物質の利用)
活性酸素対策には、まずはバランスのよい食生活と規則正しい生活が必要です。身体にまつわるトラブルの多くは、この2つを心掛けるだけでかなり改善されるはずです。
活性酸素についても、紹介した原因のうちの多くを防ぐことができます。それ以外では、外出時に帽子や日傘を活用することが効果的です。 現代はストレス社会ですから、完全にストレスをなくすということはできませんが、睡眠をしっかりととることや自分なりのストレス解消法を作っておくとよいでしょう。その他、毎日の食事の中で抗酸化物質を多く摂取するようにすることも有効です。
抗酸化物質と酵素
抗酸化物質にはビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンE(α-トコフェロール)、ベータ・カロチン、ビタミンA、グルタチオンなどがある。 活性酸素を除去する酵素には上述のスーパーオキシドディスムターゼ、カタラーゼなどがある。 近年アメリカでは、食材や健康食品の抗酸化能力の指標としてORACを採用する傾向にある。
ビタミンEは、細胞膜のフリーラジカルを消失させることにより自らがビタミンEラジカルとなり、フリーラジカルによる脂質の連鎖的酸化を阻止する。発生したビタミンEラジカルは、ビタミンCなどの別の抗酸化物質により再度ビタミンEに再生される。
キサンチンオキシダーゼは、キサンチン1分子から、尿酸とスーパーオキシド(O2–)をそれぞれ1分子生成する。キサンチンオキシダーゼ阻害剤(フェブキソスタット,トピロキソスタット)は、活性酸素種の生成を減少させる。
体内の抗酸化物質(酵素)
活性酸素を解毒する酵素系には、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、グルタチオン還元酵素、Glucose-6-phosphate dehydrogenaseが存在します。
スーパーオキシドディスムターゼ(SOD:superoxide dismutase)
SODは、スーパーオキシドを、過酸化水素と酸素に分解する:
2O2–+2H+→O2+H2O2
細胞質やミトコンドリア内に存在していて、銅(Cu)や亜鉛(Zn)やマンガン(Mn)が補助因子となる。SODは、運動など、必要に応じて、たくさん誘導されて作られるようになるが、老齢になると誘導能力が低下するという。筋肉を使った運動は、SODの活性を高め、活性酸素の除去能を高める。
ヒトは、体重当りのカロリー消費量に対してSODの活性が他の動物より高いため、寿命が長いと、考えられる。血清中のSOD活性は、成人より小児の方が高い。細胞内には、SODのように、活性酸素を消去(除去)する働きのある酵素が存在するが、細胞外にはあまり存在しないので、細胞は、外からの活性酸素には弱いと言われる。
カタラーゼ
過酸化水素を、酸素と水に分解する酵素。
2H2O2→2H2O+O2
カタラーゼは、SODと共同して、生命の寿命の延長に関与している。血管内皮細胞では、カタラーゼ活性が低い。過酸化水素(H2O2)は、細胞膜(生体膜)を自由に通過可能なので、ペルオキシゾーム内のカタラーゼ以外に、細胞質ゾルのグルタチオンペルオキシダーゼ、チオレドキシンペルオキシダーゼ、アスコルビン酸ペルオキシダーゼによっても、水に分解される。
グルタチオンペルオキシダーゼ(GSH-Px:glutathione peroxidase)
セレン(Se)を活性中心に持つ、グルタチオンペルオキシダーゼは、過酸化水素を、グルタチオンの存在下で、水に代謝させ、酸化型グルタチオンを生成する:
H2O2+2GSH→2H2O+GSSG
また、グルタチオンペルオキシダーゼは、過酸化脂質を還元する:
LOOH+2GSH→LOH+GSSG+H2O
なお、グルタチオンペルオキシダーゼは、ヒドロキシルラジカルを消去させるが、ビタミンB2(リボフラビン)を補酵素とするので、ビタミンB2の欠乏は、過酸化脂質の増量を来たす。細胞内のグルタチオン(GSH)の濃度は、5~10mMと高い。細胞内の酸素分圧が上昇すると、ミトコンドリアの電子伝達系の電子の流れが活性化させ、cytochrome c oxidaseが、酸化状態にシフトする。その結果、[NAD]/{NADH]比([NADP]/{NADPH]比)や、GSSG/GSH比が、上昇する(NADH/NAD+比は、低下する)。 Glucose-6-phosphate dehydrogenase(G6PD)と、6-phosphogluconate dehydrogenase(6-PGD)により生成される12分子のNADPHを用いて、グルタチオンペルオキシダーゼ(GSH-Px)と、グルタチオン還元酵素(GSH reductase)により、12分子の過酸化水素(H2O2)が消去され、6分子の二酸化炭素(CO2)が、肺から排出される。
参考資料