活性水素水(かっせいすいそすい)とは「活性水素」が溶けていると主張される水の呼称。健康グッズ販売のための擬似科学・造語であり、科学用語ではない。
一般的に活性水素とは水素原子のことを指し、「水素ラジカル」とも表現される。活性水素水を発生させるとする手法は、マグネシウムなどの金属を用いる手法と電解による方法が用いられる。
水素分子(水素ガス)を溶解させた「水素水」とは区別される。
金属による活性水素水・活性水素仮説
水に対してマグネシウムなどの還元力を持つ金属や陰電圧を
作用させると、通常の水素イオン (H+) や水素分子 (H2) の他に、
反応性の高い水素種「活性水素」(原子状水素(= 水素ラジカル)(H•)、
あるいはヒドリドイオン (H−))が発生してそのまま水に溶けているとする。
「活性水素」が溶けているとされる水が「活性水素水」と呼ばれている。
なお、各水素種の解説については項目: 水素 を参照されたい。
提唱者は、「活性水素とは分子状態でなく単原子で存在する水素のことであり、
健康に害をもたらす活性酸素を還元して消滅させる」と主張している。
電解水や金属マグネシウムを作用させた水の還元電位が低いことが原子状水素の
存在の証拠のひとつとされているが、それに関しては、上述の原子状水素をもちださなくとも、
第25回日本医学会総会の小久見らによる「アルカリイオン水の性質と安全性」
にあるように分子状水素の過飽和状態として十分説明できるものである。
林秀光は、人体内に水素分子を原子状水素(活性水素)に分解する能力がある酵素をもっていること
を学会で発表した。その発表で林が論じている内容は、
(1) いくつかのバクテリアが有する酵素は水素分子を原子水素に活性化する。
(2) 一方、水素が溶存している水は人間のさまざまな疾患を改善する。
(3) これらのことから、人間は水素分子を原子水素に活性化する酵素を持ち、
その原子水素の抗酸化力が疾患を改善しているのだ、というものである。しかし、林が
(1) の論拠として挙げているネイチャー誌の論文には、水素を代謝する酵素(ヒドロゲナーゼ)が
原子状の水素を発生させるということは記されていない(原子水素が水素ラジカルのことであるならば、
それはスーパーオキシドディスムターゼの逆反応なので、活性水素をヒドロゲナーゼが触媒する
というのは事実誤認である)。
電解による活性水素水
医療分野や食品衛生用などに用いられる電解水生成装置は、食塩水を原料として電圧をかけ、
アルカリ性および酸性の水を生成する装置である。これらの電解水のうち酸性のものは活性種
として次亜塩素酸などを含み、除菌、消毒用などに用いられる。アルカリ性にされた水のうち、
マイナスの還元電位が-200mV以上のものが活性水素水として研究対象にされることが多い。
活性酸素による過酸化状態を還元させるとして還元水と呼ばれることもある。
提唱者・研究者
- 林秀光
- 健康本著者。医学博士。著作の中で活性水素水がガンや糖尿病にも効くと主張。
- 早川英雄
- 事業家。著作の健康本の中で自己発明機械の活性水素水を含むものが奇跡の水であると主張。
- 白畑實隆
- 奇跡の水の研究家(九州大学)。活性水素が単原子水素と主張。
- 汐田剛史
- 鳥取大学教授。不健康な餌をマウスに与えた場合、水道水より還元水「白山命水」は脂肪肝を抑制と主張。
活性酸素を還元させるという基礎研究
活性酸素による酸化は生活習慣病の原因の一つであるという仮説がある。
活性水素水が、DNAやRNA、タンパク質を活性酸素による酸化から防御するなどと
白畑實隆らが主張した。基礎的な研究では、ラットの細胞で糖尿病を改善するような細胞の
特性の変化や、試験管内でヒトのがん細胞の増殖を抑制するといった主張を行った。
活性水素水商法
活性水素水が活性酸素を消滅させるという論点から、良い効能を持つとして活性水素水を
製造するとする装置が販売されることがあった。それらの装置の宣伝では活性水素水について、
料理が美味しくなる、柔らかくなる、肌がすべすべになる、使うことで「万病を癒す魔法の水」
などとしていた。いわゆるアルカリイオン水の生成機の宣伝トークとしてあるメーカーが使い
始めたのが「活性水素水」がメディアに現れた最初のようである。通信販売で宣伝されている
還元水素生成装置は医療機器のカテゴリーには存在しない。それらの装置の中には、いわゆる
疑似科学商品のひとつと考えられるものもある。
なお、水素分子(H2)を溶解した「水素水」は、活性水素水とは学術的な面を含め区別される。
公取委による排除命令
いわゆるミネラル還元水素水の生成装置と称するものに対して、2005年12月26日、
公正取引委員会は東証1部上場の家庭用機器製造会社「シルバー精工」(東京都新宿区)、
「日本ホームクリエイト」(港区)、「エッチアールディ」(横浜市)の3社に対して、
使用されていた商品説明資料に誤解を招く表記がされていたことから、誇大広告(優良誤認)
であるとして景品表示法による排除命令を出した。
参考資料